庭球:CP
□体温
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―深司は体温が低い。
寒い今の時季なんか、コドモ体温のオレがその手を握ってみても、温まるどころかオレの手が冷えるくらいだ。
…だから、時々オレは不安になるんだ。
オレの隣で白い息を吐く深司が、いなくならないかと。
この熱った体と深司の冷えた体が、ひとつに融けあえばいいのに。
オレは時々、本気でそう考える。
「深司、手ぇ貸して。」
「何で。」
そう言いながらも空いていた左手だけを出した深司の両手をとって、オレは自分の手で包み込んだ。
自然、オレたちは向かい合わせで見つめ合う。
深司は不審そうなカオをしながらもオレの手を振り払うことはしなかった。
それにホッとして、冷たい手をさすりながらオレはぼそりと呟く。
「深司、これ以上冷たくなんなよ?」
たぶん、それは唐突すぎて深司には伝わらなかったけれど。
深司はたしかにコクリと頷いたから。
オレは満足して、片手を離す。
オレたちはそのまま、手を繋いで歩いた。
少しかじかんだ手を、深司のコートのポケットに入れて。
「…アキラ。」
「ん?」
オレの家の前、立ち去りかけた深司は思い出したようにオレの前に戻ってきて。
不意打ちのキス。
深司の唇はやっぱり、
少しだけ冷たかった。
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