小説【短編】
□我慢できない!?
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絳攸は恐怖にかられながらも、必死に朝廷随一の頭脳をフル回転させた。静蘭を納得させるだけの理由を、今すぐ言わなければ主上の命が危ないのである。
「絳攸様?」
静蘭が笑顔で脅迫してくる。
「あー…その、なんだ。きょ、今日は天気が良いなぁ。」
空を見上げ絳攸は必死に静蘭から逃げようとする自身の心と戦っていた。
「そうですか?私には曇り空にしか見えませんが…。」
静蘭に言われ絳攸は固まる。そうなのだ、今の天気はすぐにでも雨が降りそうなくらいドンヨリとしているのだ。
「…そうだな。」
自分で「良い天気」だと言いながら頷くのはどうかとも思ったが、今天気はよくないのだ…静蘭の言うように。焦る絳攸を不審な目で見ながら、静蘭は邸に入ろうと扉を開ける。絳攸の頭の中には主上の惨殺死体が浮かぶ。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
ゴロゴロゴロ…
秀麗の悲鳴のあとに雷が鳴った。静蘭は瞬時に剣を引き抜き構え扉を開けた。
「お嬢様、ご無事ですかっ!?」
「せ、せいらぁん…っ…」
秀麗の鳴き声が聞こえる。静蘭は飛び付いて来た秀麗を受け止めると、室内を見回す。