小説【短編】
□黎深の嫌がらせ
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「ずるいずるいずるいのだぁー!!!???」
執務室から主上の叫び声が響く。
楸瑛は渋々執務室にいる王“劉輝”に声をかける。
「どうしたんですか、主上?」
すると劉輝は涙目になりながら、机上の用紙を切り刻んでいた。
「しゅ…主上?」
一瞬、声をかけるのを躊躇った楸瑛だが、年始のこのクソ忙しい時期に主上に壊れられたままで居られるのも困るので声をかける。何しろ今日は頼りの絳攸はいないのだ。
「…しゅーえー…ぅぅ…。こーゆー(絳攸)は、ずるいずるいずるいのだぁー…。」
今まで破いていた紙を捨て、子供のように泣きながら楸瑛に歩み寄る劉輝。
「主上、どうなさったのですか?」
…聞かなくても返事は分かっていた。だが、聞かなくてはこの話は終わらないので楸瑛は聞いた。一体今日だけで何回目だろうか。今日だけではなく、昨日も一昨日もこんな会話を繰り返ししていたのである。
「しゅーえー…何故だ?何故なのだ?」
半ば放心気味につぶやく劉輝に、楸瑛はため息をついた。
「何がですか?」