小説【短編】

□無題
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再度、私は首を横に振る。
「…わからない。…もしかしたら、彼の心を探していたのかもしれない。」
「…?」
私の言葉に怪訝そうな顔をする目の前の男。
「心…彼の心が欲しかったの。…だから探した。…でも見つからなかった。」
明らかに私を見る目の色を変えた男は尚も怪訝そうに私を見ていた。
「彼を愛していた。それなのに彼は私を捨てて、新しい女の所に行こうとしていた。…それが許せなかった。彼を私だけのものにしたかった…。」
だからこそ、私には彼の心が必要だった。私から離れて行ってしまう彼の心を手元に残しておきたかった。例えそれが、どんな姿形であったとしても…。






−心から欲する物を手に入れるため、人は時として手段を選ばない−。



end
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