小説【短編】
□仮面(いつわり)
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「ごめん…なさい…」
溢れ出る泪を止める術を私はもう持たない。
「いや、構わない。お前が気にすることではない。」
仮面の彼から発せられた言葉は、冷たく硬く室内の空気を揺らした。
「…っ……ごめ…なさ…ぃ」
「謝るな、お前は悪くない。」
ただただ泪を流し謝ることしか出来ない私を、鳳珠(かれ)は責めもせず、逆に逃げ道を作ろうとさえしてくれている。
「…ちが…、わた…が悪…いの。ごめん…なさ…っ…」
泣きながら謝る私を引き寄せた鳳珠(かれ)の腕は、昔と変わらず暖かかった。それは、再び私を勘違いの迷路に導くかのようだった。
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