小説【短編】

□無題
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「…何故、殺した?」
私は首を横に振る。
「…わからない。」
本当に何もわからなかった。
何故、私はここにいるのか。
何故、彼は血を流し死んでいるのか。
何故、血の海の丁度中央辺りに私はいるのか。
何故、私の手には包丁が握り締められているのか。
何故、私の服は赤く染まっているのか。
何故何故何故…?
全てが分からないままだった。気を許すと自分自身が誰だということさえ、分からなくなってしまいそうな…そんな気がした。
ただ私の目の前には彼が死んでいて、そのすぐ側に彼の親友で警察官の男がいる。今の私には、その事実しか分からなかった。


【警察署、取調室】

「…何故、殺した?」
私は首を横に振る。
「…わからない。」
本当に何もわからなかった。
「じゃぁ聞くが、何故あんな無残な……、切り刻むなんて…あんな方法で…」
目の前の男は辛そうな顔をしていた。…それもその筈だ、私が殺した男も警察官なのだから…。「仲間が殺された」その事実が警察官皆に共通して、のしかかっているようだった。
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