【短】物語
□闇とロボット【完結】
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【3】
“闇”が顕れる。醜悪で、醜く、巨大な闇が目前に
拡がる。闇は僕を包み隠し、すでに周りの地形さえ見
ることはできない。
ここはすべてが闇だった。
ここは闇の支配する世界だった。
まるで、自分自身が“闇”と同化してしまったかの
ような、そんな感覚。
それほどまでに、そこには“闇”だけしか無かっ
た。
一瞬の静寂が周囲を支配する。
そして、異変。
突如、闇が揺れる。
それは何の前触れも無く。
全てを飲み込むかのように。
闇が。
狂気し。
叫ぶ。
そして。
世界が震えた。
◇
僕は最強のロボットだった。日本を壊滅させ、アメ
リカさえ完全に叩きのめしたその力は、まさに最強と
呼ぶに相応しいものであったはずだ。
だが…。
それは大きな間違えだった。
目の前に拡がるこの圧倒的な存在はなんだ?
僕が世界最強?
最強だって?
馬鹿げてる。
はははっ…。
そこに在ったのは純粋な恐怖、絶望、焦躁感。
僕はもう一度、目前を見つめる。
いつの間にか周囲の闇は晴れており、闇が一箇所に
凝縮し、具現化した、醜悪な存在がそこには在った。
―――“闇”が在った。
◇
闇が動き出す。圧倒的な存在感を放ちながら、ゆっ
くりとそれは移動する。闇が進んだ後の地面は黒く、
闇色に染まり、生命の息吹さえ感じることができな
い。
闇が僕に近づく。闇は僕を真っ直ぐに見据え、そし
て動きを止める。その刹那、僕は闇に捕らえられてい
た。
ゆっくりと、しかし確実に闇は侵食してくる。僕に
は微かにだが、闇が笑っているように感じられた。闇
は僕の身体をすべて覆い尽くし、飲み込もうとしてい
る。
やはり闇を敵にまわすなんて無謀であり、誤りだっ
たのだろうか?
誤り…?
いや…違う。
これは僕の意志であり、僕の決意だ。すべては闇と
決別し、別の道を行く為の手段なんだ。
力が欲しい。
僕と闇を繋ぐ、強固な鎖を断ち切る力が…!
そして……。
僕は完全に闇に飲み込まれた。