【短】物語

□闇とロボット【完結】
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【3】


 “闇”が顕れる。醜悪で、醜く、巨大な闇が目前に

拡がる。闇は僕を包み隠し、すでに周りの地形さえ見

ることはできない。






 ここはすべてが闇だった。






 ここは闇の支配する世界だった。





 まるで、自分自身が“闇”と同化してしまったかの

ような、そんな感覚。






 それほどまでに、そこには“闇”だけしか無かっ

た。








 一瞬の静寂が周囲を支配する。

 そして、異変。

 突如、闇が揺れる。

 それは何の前触れも無く。

 全てを飲み込むかのように。








 闇が。

 狂気し。

 叫ぶ。

 そして。

 世界が震えた。
 






 僕は最強のロボットだった。日本を壊滅させ、アメ

リカさえ完全に叩きのめしたその力は、まさに最強と

呼ぶに相応しいものであったはずだ。

 だが…。

 それは大きな間違えだった。

 目の前に拡がるこの圧倒的な存在はなんだ?

 僕が世界最強?

 最強だって?

 馬鹿げてる。

 はははっ…。

 そこに在ったのは純粋な恐怖、絶望、焦躁感。

 僕はもう一度、目前を見つめる。

 いつの間にか周囲の闇は晴れており、闇が一箇所に

凝縮し、具現化した、醜悪な存在がそこには在った。









―――“闇”が在った。













 闇が動き出す。圧倒的な存在感を放ちながら、ゆっ

くりとそれは移動する。闇が進んだ後の地面は黒く、

闇色に染まり、生命の息吹さえ感じることができな

い。



 闇が僕に近づく。闇は僕を真っ直ぐに見据え、そし

て動きを止める。その刹那、僕は闇に捕らえられてい

た。



 ゆっくりと、しかし確実に闇は侵食してくる。僕に

は微かにだが、闇が笑っているように感じられた。闇

は僕の身体をすべて覆い尽くし、飲み込もうとしてい

る。

 やはり闇を敵にまわすなんて無謀であり、誤りだっ

たのだろうか?





 誤り…?




 いや…違う。




 これは僕の意志であり、僕の決意だ。すべては闇と

決別し、別の道を行く為の手段なんだ。






 力が欲しい。





 僕と闇を繋ぐ、強固な鎖を断ち切る力が…!





 そして……。





 僕は完全に闇に飲み込まれた。
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