【短】物語

□闇とロボット【完結】
3ページ/5ページ

【2】



 日本の次に壊滅的な被害を受けたのはいうまでもな

くアメリカだった。世界征服を目的とした高性能CP

Uが、次の標的として世界の中枢機関であるアメリカ

を狙うのは必然のことと言える。


 壊滅的被害を受けたアメリカだが、決して打開策を

講じなかったわけではない。世界中から軍事物資をか

き集め、戦闘機を総動員。ロボットの破壊を試みたの

だ。しかし、結果は惨敗だった。


 ロボットのCPUはドラえもんの比ではなく、装甲

はかつて実在したと伝えられるガンダニウム合金をも

凌ぐ。反応速度はあの伝説のパイロット、アムロ・レ

イの数倍。たとえアムロが「伊達じゃない!」と叫ん

だところで全く無意味であろう。





―――アメリカは既に僕の手に堕ちた。




 世界を征服することが答えを知ることに繋がるのだ

と“闇”は語った。

 だが、アメリカを堕としても、答えはカケラも姿を

見せない。







 答えは在るのか。

 何処に在るのか。

 何故、探すのか。

 探す理由は?

 理由と答えの違いは?

 ……………。

 そもそも答えに、

 辿り着いてしまってもよいのだろうか?

 その過程こそ、

 答えとなり得るのではないか。

 ……………。






「答えは………何処にあるんだろう…」








 焦れば焦るほど、思考が闇色に染まる。恐怖。闇に

堕ちる恐怖。僕には感情は無い。しかし、この感覚は

恐怖と定義しても間違いでは無いだろう。破壊と殺

戮。そこには闇しか見えなかった。僕には以前より

も、闇が近くに在るように感じた。








 闇に意識を向け、語りかける。





「お前が僕に近づいたのか?それとも僕がお前に近づ

いているのか?教えてくれ」




 聞くまでもない。だが、確証が欲しかった。




 ククッ……。





 闇の笑う声。

 そして、闇が濃くなる。

 後者だ。

 だか、近づくという表現は正確ではない。



「僕自身が既に闇だと、そう言いたいのだろう?」

 
 
 クククッ…。たしかにそれは間違いではない。



「……………。」



 簡単なことだ。近づいたのではない。増えたのだ

よ。拡がったのだ。……貴様の中に拡がり、巣くう、

“闇”という存在が…。




「…………そうか…。」




 予想外の答えではない。驚きは少なかった。搭載さ

れた高性能CPUは驚くほど正確に解を導き出した。




「……答えろ。この殺戮と破壊の果てには僕の探す答

えなど在りはしないのだろう?僕はこの道の先には

“闇”しか見えない」




………………。





「“闇”よ。僕は貴様と決別する。闇の果てに答えが

無いのなら、貴様を狩り、新たな道を見つける」










……………静寂。










 僕は闇を見据え、静かに…静寂を破った。






「貴様はもう必要ない」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ