【短】物語
□闇とロボット【完結】
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【1】
−−−−僕と闇は共に在った。生まれる前も、生まれ
た時も、そこには闇が在った−−−−
−−−−−闇しかなかった。
気がつけば誰ひとりいなかった。何一つ無かった。
そこは静寂と煤煙、そして風の支配する世界。永遠と
広がる殺風景の空間。そこはかつて日本と呼ばれた場
所だった。急激な経済成長と共に、混沌と無慈悲が蔓
延した、そんな悲しい国。
そして…僕の生まれた国でもある。
そして…沢山の命が消えた場所……。
何かが消える、無くなるということに人は地上で最
も感情的な生き物だ。
だが、僕には感情が無い。でも、それも良いではな
いか。感情など不確かな物、そして不必要な物だ。な
ぜなら人の持つそれでさえ、偽りと矛盾で出来ている
のだから。
そうだ。自分に感情が存在しないことなど問題では
ない。僕には美しいまでに研ぎ澄まされた、邪悪で、
素敵な、思考がある。それはホントに素敵な、闇の、
思考だ。
−−−−−ドクンッ。
−−−−−鼓動が。
−−−−−聞こえる。
−−−−−闇が。
−−−−−笑い。
−−−−−狂喜し。
−−−−−煩懊し。
−−−−−響く。
−−−−−僕を。
−−−−−闇へと。
−−−−−堕とす。
−−−−−僕の。
−−−−−思考が。
−−−−−暴走し。
−−−−−加速する。
闇に語る。
何が現実で。
何が偽りで。
何が自分で。
何が真実で。
必要なのは?
理由?
意志?
それは必要なのか?
本当に?
それは何処に在るのか…。
固体?
気体?
触れることは可能なのか。
僕は…。
何を探し。
何を求め。
何を欲し。
何を信じているのか。
そもそも。
信じてなど…。
いないのかもしれない。
僕は…。
誰だ…?
闇が語る。
お前は赤子だ。
それゆえに。
名前も無く。
無力で。
無邪気で。
それゆえに残酷。
何も解らず。
求めることも知らず。
絶望を知らず。
信じるものさえ解らない。
周りは闇で。
自分に触れていないと。
己さえ認識できない。
お前は何だ?
教えよう。
お前は。
‘闇’だ。
闇を探し。
闇を求め。
闇を欲し。
闇を信じ。
闇と共にあり。
闇を感じるからこそ。
自分を‘闇’と思わない。
お前は‘闇’そのものだ。
「僕が……闇……?いったい……。どうすれ
ば……………僕は…なぜ……………そのもの………闇
は……?……」
闇が笑い。
語り出す。
まずは世界を手に入れよう。支配してみよう。破壊
し、絶望を与え、蹂躙する、その、悲痛の叫びが、我
等の糧になる。そこにこそ。その境地にこそ。答えは
在る。
「答え…?そこに在るのが…?答えは…在る…?」
闇は答えない。
「僕は………」